設問
運行管理者が、次の乗合バスの車内事故報告に基づき、この事故の要因分析を行い、同種の事故の再発を防止する対策として、最も直接的に有効と考えられる組合せを1つ選びなさい。
なお、解答にあたっては、<事故の概要>及び<事故関連情報>に記載されている事項以外は考慮しないものとする。
<事故の概要>
当該運転者は、午前5時に出勤し日常点検を終え、点呼を受けてから定刻どおりに出庫した。
その後、路線運行の途中において、前夜の睡眠不足による疲労と注意力の低下を感じながら、見通しの悪いバス停にさしかかったので、時速30キロメートル程度でバス停に接近した。降車する乗客もなく、バス停にも乗車する客が見あたらなかったので、そのまま通過しようとしたところ、電柱と街路樹の陰で合図をする客の姿が見えたので、あわてて強めのブレーキをかけて停車した。
そのとき、最後部の座席の中央に着座していた高齢の乗客が、急ブレーキの反動で座席から通路に転がり落ちて負傷した。
<事故関連情報>
○ 当該運転者は、28歳で運転経験3年、過去3年間無事故無違反の運転者である。
○ 当該運転者は、頻繁に夜遅くまで友人たちと遊興することがあり、事故前夜も夜更しをしたため、事故当日は、睡眠不足の状態であった。
○ 乗務前点呼時、運行管理者は運転者が睡眠不足気味に見えたものの、本人「から特に申し出がなかったので、疲労の状態には問題がないと判断した。
○ 当該運転者は、事故発生後直ちに当該バスを路側に寄せ、負傷した乗客を「介護した後、救急車を手配した。
○ 当該運転者の事故日前1ヵ月間の勤務において、拘束時間や休息期間等について、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の違反はみられなかった。
○ 当該バス会社では、乗合バスにドライブレコーダーは未装着であり、営業「状況を勘案した上で導入を検討しているところであった。
○同社では毎月運転者の集合教育を実施しているが、管理者の講話が中心で、運行時のヒヤリ・ハット体験などが教育に活用されていないため、運転者の間でそれらの情報が共有化されていなかった。
○ 当該運転者は、適性診断結果において「判断動作のタイミング」の項目で、動作が不安定になりやすいという結果となっていた。
○ 同社の定期健康診断は、年に2回実施しており、当該運転者は受診結果に問題はなかった。
<事故の再発防止対策>
ア:運行管理者は、運転者の生活状況を把握して、点呼時に疲労状況、睡眠不足や健康状態をしっかりとチェックするとともに、必要な助言・指導を行う。
イ:「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準告示に定められた休息期間について確認し、乗務割の見直しを行う。
ウ:事故が発生した場合には、直ちに車両を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じるよう再徹底する。
工:実際に事故が発生した地点の情報や、ヒヤリ・ハット情報に基づく危険予知トレーニングを速やかに全社的に実施し、運転者がこれらの地点において安全運転の基本動作を確実に実施するよう指導する。
オ:運行の安全を確保するため、身体機能が変化しつつある高齢運転者を対象に、適性診断結果に基づき、日頃の運転で特に留意すべき事項を指導する。
カ:急停止や急発進等の走行に関するさまざまなデータの把握が行えるドライブレコーダーを速やかに導入し、運転者ごとの運転特性を的確に把握して、これを基に各運転者を指導する。
キ:通常の定期健康診断を確実に実施することに加えて、疲労が蓄積しないような責任ある自己管理を指導する。
ク:バスの全運行経路において、見通しの悪いバス停をリストアップして、安全確保のための改善対策を速やかに講じ、運転者に周知する。